コラム詳細
はじめに
興味のある情報に誰もが簡単にアクセスできる今、以前のように「売る」ことだけにフォーカスした営業スタイルでは、継続的・長期的に顧客満足度を高めることは困難です。そこであらためて注目されているのが「営業ヒアリング」です。
本記事では、適切なヒアリングを行うためのコツや流れ、活用可能なフレームワークについて解説します。
「営業ヒアリング」とは、営業活動を行う際に、顧客のニーズ、課題点・問題点、不安などを聞き取ることです。これらの情報を活用することで、より最適な提案ができるようになります。ヒアリングを行う際に顧客の話に耳を傾け、真摯に対応する姿勢を示すことで、顧客との信頼関係を築けます。
顧客のニーズに即した提案を行い、信頼関係を構築することで、提案の受け入れや契約成立の可能性が高まり、継続的な売上につながります。
各営業担当がヒアリングの成功パターンを得ることで、営業部門全体の営業力が向上し、それに伴う顧客満足度や企業価値の向上も期待できます。
成果を出す営業担当に共通しているヒアリングのパターンとして、次のような点があげられます。
まずは、あらかじめ顧客に関する情報をしっかりと集めます。業種や規模、主要サービスなどの企業情報はもちろん、市場の動向や競合他社の動きなど、外部環境も忘れずに調べましょう。この下準備は、成果につながるヒアリングを行ううえで欠かせないプロセスです。そこで得られた情報を手がかりとして、顧客が直面している可能性がある課題やニーズを多角的に考えます。
その後、想定した課題への解決策を作成します。その際は、別の顧客の成功事例も調べておきましょう。他社の成功事例をもとに、自社の製品やサービスがどのように役立つかを具体的に示すことで、顧客に対する説得力が増します。
顧客が時間を割いてくれた際は、一方的に営業トークをするのではなく、顧客の話を聞くことに集中しましょう。そうすることで、事実をしっかりと把握できるだけでなく、言外の意味までくみ取りやすくなります。質問をする際は、事前に想定した仮説に沿って、聞きたいことやテーマをピックアップしておきましょう。ヒアリングが苦手だという人はなおさら事前の準備が重要です。そうすることで、限られた時間を有効に使えます。
曖昧な質問、何を聞きたいかわからない質問、担当者のプライベートに関わる質問などは避けましょう。顧客が不信感・不快感を持ち、失注につながる恐れがあります。
声のトーンや大きさ、話すスピード、相槌を打つタイミング、ジェスチャーなどを、顧客のペースに合わせることも有効です。そうすることで警戒心がやわらぎ、親密感が生まれやすくなります。また、顧客が関心を寄せているトピックや興味の度合いなどを考えながら、次の質問をするタイミングなどをはかることも大切です。顧客が心地よいと感じる会話の「間合い」を探ることを心がけましょう。
顧客の視点に立って考え、潜在的な課題点やニーズも探りながらヒアリングをすることで、有益な情報をより多く集められます。それによって、顧客を起点とした最善の提案につながります。質問をする際も、「〇月の法改正によって〇〇が義務化されましたが、〇〇をまだ使われていないのであれば、各現場で管理にバラつきがあってお困りなのではないですか?」のように、顧客目線に立って尋ねることを心がけましょう。そうすることで、具体的な話につながりやすくなります。
ここでは営業ヒアリングの基本的な流れについて解説します。
アイスブレイクとは、何気ない会話をすることで、リラックスして会話できる雰囲気を作ることです。アイスブレイクはうまく機能すれば一体感が生まれ、好印象を与えられます。顧客との共通点や興味のあることを見つけ、それに何気なくふれるのがオススメです。
たとえば「天気」に関する話題は、当たり障りがありません。また、季節、ファッション、食べ物などの話題も適しています。「打ち解けること」が目的なので、感情的になりやすい話題、ネガティブな話題、自分を含めた誰かを貶める話題、お世辞のような話題は避けましょう。
想定した仮説をふまえながら、顧客の顕在的・潜在的な課題やニーズ、目標、今使用している競合の製品・サービスに関する意見、決裁に関わる人などについて、詳しくヒアリングしましょう。なお、ヒアリングを行ううえでのコツ・ポイントは後述します。
ヒアリングで得られた情報・データを分析し、顧客の課題や戦略、目標などの本質をしっかりと把握したら、プレゼンテーションを行います。
その際、顧客は「より安価で優れた製品があるのでは」などの不安を抱く可能性もあります。その場合、自社の製品・サービスで顧客の課題の根本的な解決ができることを明確にし、顧客の業績や効率が向上する将来像を具体的にイメージしてもらうことが重要です。たとえば、「自社の製品・サービスによって〇〇が向上する」と説明をし、顧客にとってのメリットを強調しましょう。自社の製品・サービスが顧客のビジョンを実現するために不可欠だと認識してもらえれば、安易な値引きを行う必要もありません。
クロージングでは、強引に契約を迫らないことが基本です。顧客によく考えてもらうことを優先しましょう。
顧客が契約に対してどの程度意欲的であるかを確認するためには、商談中にテストクロージングを行うのが有効です。たとえば「見積書には納得していただけましたか?」「契約に関してご不明点はありませんか?」などの問いかけを行います。課題がある場合は、それをひとつずつ解消しながら、再びテストクロージングを行いましょう。
意欲的だと判断したら、「ご契約をいただけるのは、いつ頃になりそうでしょうか?」などの具体的な問いかけで、はっきりと契約の意思を確認しましょう。そして、内容・条件などを確認し、問題がなければ契約を締結します。
なお、契約締結に至らない場合は、ネクストアクションを取りましょう。顧客の関心が高まっているうちにフォローアップを行い、顧客との関係を強化することが大切です。たとえば、次の打ち合わせ日程を設定することや追加情報を提供することなどが考えられます。
ヒアリングを行ううえで、フレームワークの活用は有効です。フレームワークを使うことで、顧客の本質的な課題とその背景を分析するための情報を、網羅的に聞き取れます。
「3C分析」とは、企業を取り巻く状況を客観的に分析するためのフレームワークです。3Cとは、次にあげる3つの要素の頭文字を取ったものです。3Cとは市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの要素の頭文字を取ったものです。
ヒアリングを行う際、この3つの項目を明確にすることで、業界における自社の競争力を客観的に示しやすくなります。また、顧客の企業を分析する際にも使えるので、より有意義なヒアリングができます。
「SPIN話法」は、会話を進める中で次の4つの質問を取り入れる話法です。SPINは状況質問(Situation Questions)、問題質問(Problem Questions)、示唆質問(Implication Questions)、解決質問(Need-Payoff Questions)の頭文字を取ったものです。これらの質問を通して顧客に顕在的・潜在的なニーズを再認識してもらい、自社の製品・サービスを優先順位の高い解決策だと捉えてもらえます。
「BANT情報」は、成約のために必要な情報です。受注確度を分析するためにも使われます。BANTは予算(Budget)、決裁権(Authority)、ニーズの有無・範囲(Needs)、導入時期(Timeframe)の頭文字を取ったものです。BANTは営業活動をスムーズに行ううえで役に立つ情報ですが、取引先企業の人事異動や施策変更にともない、予算や決裁権などが変更になる、契約見込み月が来月以降になるなどのケースがあるため注意が必要です。
BANTよりも新しく、より現代のビジネスに即しているのが、「MEDDIC」です。BANTと同様、スムーズな成約のために必要な情報です。
MEDDICは測定指標(Metrics)、EB・決裁権限者(Economic Buyer)、意思決定基準(Decision Criteria)、意思決定プロセス(Decision Process)、課題(Identify Pain)、擁護者(Champion)の頭文字を取ったものです。
EBには投資家なども含まれます。決裁者が了承しても、最終段階で却下されるおそれがあるので、EBの視点も考慮しながら営業活動を行いましょう。また、Championは導入に前向きで、決裁権限者に対する影響力がある人です。そのため、Championの情報もEBと同じく収集しましょう。
営業の成約率を上げるためには、ヒアリングシートを有効活用しましょう。ここでは、営業のヒアリングシートで必要な10項目についてそれぞれ詳しく解説します。
今の状況
顧客企業の状況だけでなく、業界全体のトレンド、課題、変化、動向なども把握しましょう。担当者が所属する部門だけでなく、全社的な視点からの課題もしっかりと聞き取ることが重要です。
解決したいこと
表面化している課題だけでなく、潜在的な課題点や複雑な問題も聞き出すことで、自社の提案が優先されやすくなります。ニーズの背景もしっかりと把握することで、期待以上の効果を提供しやすくなります。
希望納期
顧客が自社の製品・サービスに強い必要性を感じていれば、希望する納期が後ろ倒しになることはほとんどありません。そのため、希望する納期がかなり先なのであれば、提案に何か問題があるのかもしれません。提案内容の見直しも検討しましょう。
予算
多くの企業は「予算はあまりない」と答えがちですが、ROI(投資収益率)が高ければ予算を確保する企業も少なくありません。「予算を確保する価値がある」と判断してもらえる提案を目指しましょう。
決済関係(方法と流れ)
顧客企業の決済に至るまでのプロセス、EB、Championなどの情報を把握することも、非常に重要です。セキュリティチェックやNDA(機密保持契約書)の締結を行うかどうかなども確認しましょう。
決定する際の基準と決定を躊躇している理由
決定を躊躇しているのが「興味がない」という理由であれば、潔く引くのもひとつの方法です。理由が時期的・季節的なものなどであれば、適切なタイミングで再アプローチをするのも有効です。
検討時のキーパーソンは誰か
キーパーソンは、決裁者だけとは限りません。決裁者が信頼できる部下に製品・サービスの選定を一任している場合もあります。また、決裁者がOKを出しても、コンプライアンスの責任者がNGを出す可能性もあります。ヒアリングを通じてキーパーソンを把握しましょう。
他社に話を聞いているか
顧客は競合他社とも製品・サービスを比較しているはずです。そのため、客観的なデータを示し、本質的な課題を解決できるのは自社の製品・サービスだと認識してもらうことが大切です。
コンペの場合の人数
コンペになる場合は、どのような企業がどれくらい参加するのかも知っておくと、対策を立てやすくなります。競合の情報を集め、提案内容をどう差別化するかを考えましょう。
その他聞くべきこと
顧客企業が定めた情報セキュリティポリシーやコンプライアンスポリシーなどがある場合には目を通し、その背景を提案に取り入れましょう。
営業ヒアリングは、顧客のニーズを深く理解し、最適な提案を行うための重要なステップです。紹介した10項目を活用し、顧客との信頼関係を築きながら成約率を向上させましょう。
まとめ
継続的に成約し、顧客満足度を高めるには、ヒアリングで本質的な課題を探り、最適な提案を行うことが大切です。各営業担当が実践すれば、営業部門全体の営業力と企業価値が向上します。もし営業支援をお考えの場合には、セラクCCCにご相談ください。セラクCCCはSalesforceの認定パートナーとして最高位のExpert認定を取得しており、定着・活用支援においてトップクラスの実績と豊富な人材(コンサルタント)を有しています。この豊富な実績から培ったノウハウを活かし、お客様の営業活動をサポートします。ぜひ、お気軽にご相談ください。また、お客様の状況に合わせて、リモートや常駐、運用の内製化など柔軟な対応が可能です。
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