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Tableau Cloud(旧Tableau Online)とTableau Serverの導入前に把握しておきたい違い

2023年04月13日

  • Tableau
  • 使い方

はじめに
セラクCCCのSalesforce推進部Tableau担当のUです。『Tableau Cloud(旧Tableau Online)』と『Tableau Server』はどちらも「分析によって得たインサイトの共有」機能を主眼とした製品であり、Tableau導入の際にどちらかを選択する必要があります。しかしバージョンアップや新製品追加、クラウドサービス全般の利用増加により、Tableau製品選びのポイントも次第に変わってきており、自社に最適な選択は簡単ではありません。
そこで本記事ではTableauのライセンス契約前に知っておきたい、『Tableau Cloud(旧Tableau Online)』と『Tableau Server』について多角的に解説します。
 
また、Tableau活用推進の秘訣を深堀した事例もありますので参考になれば幸いです。
【Tableau活用事例解説】コンサルタントが深堀

 

2つの共有製品、Tableau CloudとTableau Server

『Tableau Cloud』と『Tableau Server』は、分析に利用するデータやデータを可視化したグラフを、ネットワーク上で共有するための製品です。

 

Tableau Cloud(旧Tableau Online)とは

2022年6月に発表された『Tableau Cloud』は、『Tableau Online』の後継となるクラウド型の分析結果共有・閲覧ツールです。『Tableau Cloud』はTableauを提供するセールスフォース社が管理するサーバを利用します。ほかのクラウドサービス同様、インターネット経由で場所を選ばずオフィス外からもアクセスできる利便性が大きな特徴です。

 

『Tableau Cloud』は単なる分析結果の共有・閲覧ツールではありません。データ分析サイクル全体を効率的に進めるための機能を備えています。
たとえば、Slackと連携してデータや分析結果をシームレスに共有できる機能や、AIを利用してデータを活用できる「データに聞く」や「データの説明を見る」という名称の分析拡張機能もあります。2022年6月にはダッシュボード内容の要約を自動的に生成する「データストーリー」が実装されるといったように、新機能の追加も活発です。

 

Tableau Serverとは

『Tableau Server』も単なる分析結果の共有・閲覧ツールではなく、データ分析サイクル全体を効率的に進める機能を備えている点は、『Tableau Cloud』と同様です。
『Tableau Cloud』と大きく異なるのは、『Tableau Server』をユーザ管理のサーバにインストールする点です。ユーザが自社サーバを運用して、インターネットを介さずにイントラネットの形でTableauを活用するというように、自前のITインフラを利用したい場合に『Tableau Server』は適しています。

 

最新バージョンのTableau製品を利用するためには、年に数回のアップグレードが欠かせません。セールスフォース社がサーバを管理する『Tableau Cloud』と違い、自社でサーバを運用する『Tableau Server』は、アップグレード作業も自社スタッフが行う必要があります。安全に作業を進めるためには、本番環境以外にテスト環境を利用する、バックアップを用意して復旧可能なポイントを作っておくといった手間も必要であり、社内スタッフに運用負荷がかかることは覚えておきましょう。

 

Tableau CloudとTableau Serverの違い

2製品の大きな違いは、共有のために利用するサーバの管理者が異なる点です。これが原因となり、サーバ管理者の人件費だけでなくコストとカスタマイズ性、インシデント発生時の責任といったようにさまざまな面で違いが生じます。

 

コストとカスタマイズ性

『Tableau Server』を利用する場合は、ユーザ自身がサーバを用意して製品のインストールから管理・保守運用までを行う必要があります。そのため運用コストはかかりますがカスタマイズ性は高く、セキュリティ強度を求める金融機関をはじめとした企業に多く利用されています。ほかにも部署や支社で閲覧できる範囲が異なる複数のサイトを運用する、ストレージ容量を変更するといったカスタマイズも可能です。

 

『Tableau Cloud』を利用する場合は、サーバ管理はTableauを提供しているセールスフォース社が担当するため、ほかのクラウドサービス同様ユーザ側の事前準備が不要であり、手軽に導入できて運用コストを抑えられます。ほかにも『Salesforce』のようなクラウドサービスを利用している場合は、Tableauの利用開始に際してセキュリティ面で追加コストがかからないのも魅力です。しかし、サーバ側で設定が必要なカスタマイズは難しいといったネックがあることは覚えておきましょう。

 

インシデントリスクと責任

『Tableau Server』を外部から切り離し、自社ビル内のサーバとイントラネットを利用してビル内の社員だけアクセスできるように運用すれば、プロバイダやネットワークに起因するインシデントリスクを避けられます。しかし自社サーバや社内ネットワークに問題が発生した際には、自社が責任を負い、社内人員で対応することが必要です。

 

一方で『Tableau Cloud』はクラウドサービスであり、セールスフォース社の管理するサーバにインターネット経由でアクセスするため、ネットワークに起因するインシデントを避けられません。地震災害で事業所とサーバ間の回線が物理的に切断されてしまったという場合には回線事業者が、サーバに起因する障害にはセールスフォース社がそれぞれ対応します。障害発生時に自社への負荷が抑えられるというメリットはありますが、自社が「コストがかかっても急いで復旧したい」と希望しても実現は難しいというデメリットもあります。

 

製品間の移行

Tableauを導入した後でも、随時『Tableau Cloud』から『Tableau Server』へ、または『Tableau Server』から『Tableau Cloud』へ移行できます。社内システムの変化やほかのクラウドサービス利用を始めたといった理由で、利用するサーバを移行したいという場合も困りません。
どちらの製品を選ぶと長期的なメリットがあるか事前に想定できない場合は、手間や費用の軽い方で運用を開始し、利用状況を勘案して必要であれば移行する、という方法もオススメです。

 

ただ、2つの製品では利用できるストレ―ジ容量に差があることには注意が必要です。『Tableau Server』のストレージ容量はユーザ企業が調整できますが、『Tableau Cloud』にはサイト1つにつきストレージ容量1TBの制限があります。別途『Tableau Advanced Management』を利用すればセキュリティ強化やストレージ容量の追加が可能ですが、別途費用がかかるためストレージ容量だけでなくコストベネフィットの検討が必要です。そのため手間はかかりますが移行の際に、バックアップデータをローカルストレージに保存する、使わなくなったデータを削除するといった方法でデータを整理してコンパクトにまとめるのが効果的です。

 

データ分析サイクルにおけるTableau製品それぞれの役割

Tableauにはさまざまな製品があります。データクリーニングに特化した『Tableau Prep Builder』や、可視化したデータの閲覧用の『Tableau Reader』といった分析サイクルの1工程に対応した製品だけではありません。『Tableau Desktop』はデータ収集から新たな知見獲得までの多くの工程について、手元の端末を利用して分析を進める際に便利です。2024年にはAIを活用して自動的にユーザが追跡する指標の変化傾向や要因、外れ値などを検出して重要なインサイトを提示する『Tableau Pulse』といった製品も登場しています。

 

『Tableau Cloud』と『Tableau Server』はこの製品群のなかでも、データクリーニングから知見の共有まで、データ分析サイクルの多くの工程に対応している製品です。とくに、『Tableau Desktop』と『Tableau Reader』とはそれぞれ対応する工程で重複している部分があるため、違いをしっかりと把握しておきましょう。

 


<データ分析サイクルとTableau製品の対応>

 

Web作成環境とTableau Desktopの違い

『Tableau Cloud』や『Tableau Server』のWeb作成環境は『Tableau Desktop』と同じように、グラフを作成するビジュアル表現から新たな知見獲得まで、データ分析の中核といえる工程に対応しています。

 

『Tableau Cloud』や『Tableau Server』には分析結果の共有機能もあるため、『Tableau Prep Builder』を使ってクリーニングしたデータをアップロードすれば、『Tableau Desktop』を利用せずにWeb作成環境でデータ分析することも可能です。

 

しかしWeb作成環境と、手元の端末にインストールした『Tableau Desktop』にはいくつかの細かい違いがあります。グラフ内で右クリックから利用できるメニューや、キーボードショートカットなど細かい操作が異なるため、『Tableau Desktop』の操作に慣れたユーザほど、Web環境が利用しにくいと感じてしまうこともあるでしょう。

 

Tableau Readerによるファイル形式の共有とサーバ上での共有の違い

『Tableau Reader』は『Tableau Desktop』での分析結果を、Tableauパッケージドワークブックというファイル形式で共有する無料のツールです。WindowsとmacOSのどちらにも対応しており、ダウンロードして利用できます。

 

サーバを利用した共有はタイムラグが少なく、コピーしたパッケージドワークブックを閲覧者の端末に保存しないため、セキュリティ面でも安全性が高いといった特徴があります。そのため、『Tableau Cloud』や『Tableau Server』をメインに運用しつつ、場合によっては無料の『Tableau Reader』を組み合わせて利用しましょう。

 


<ファイルベースの共有とサーバでの共有>

 

Tableau導入の際に注意したいライセンスと利用できる機能

Tableau一般ユーザにとっては、利用するサーバの違いよりもTableauライセンスの種類が大きく影響します。クリエイターとエクスプローラー、ビューワーの3種類のライセンスがあり、このライセンスによって利用できる製品の機能範囲が異なります。ビューワーは基本的に閲覧用、エクスプローラーはビューワーの機能に加えて簡単な分析やカスタマイズが可能、クリエイターは製品に備わった機能すべてを利用できるライセンスです。

 


<ライセンスの種類により利用できる機能に差がある>

 

ビューワーとエクスプローラー、クリエイターそれぞれのライセンスでできることの違いについて、『Tableau Cloud』と『Tableau Server』のWeb作成機能に関わる部分にしぼって以下の表にまとめました。
ライセンスによってほかのTableau製品で利用できる機能も異なるため、利用できるWeb作成機能の違いだけで最適なライセンスを選ぶことはできませんが、参考にしてください。

 

ライセンスによってできることの違い
クリエイター
ブラウザ上でデータへの新しい接続を作成
ワークブック (.twb ファイルと .twbx ファイル) をアップロード
ブラウザまたは『Tableau Desktop』からの、データソースおよびワークブック構築と公開
公開されているワークブックをブラウザまたは『Tableau Desktop』で編集
新しいデータフロー作成と既存フローの編集
ダッシュボードスターターの使用 (『Tableau Cloud』のみ)
エクスプローラー
サイト上に公開されているデータソースへの接続と、新しいワークブック作成
パーソナルスペースに新しいワークブックを保存
パーソナルスペースへの、データを含むワークブックまたはその他コンテンツのダウンロード
公開されたワークブックの編集や分析
データアラートの作成
ほかのユーザのサブスクリプション作成
ビューワー
公開されたビューやカスタムビューの表示
フィルタ―や凡例、並べ替え、ツールヒントを使ったビュー内データの検索
共有やコメント、コンテンツのダウンロード

 

まとめ
Tableauを導入する際、『Tableau Cloud』と『Tableau Server』のどちらかを選択する必要があります。しかし、Tableauの運用体制やほかのクラウドサービスの利用状況、全社的な情報セキュリティ管理といったさまざまな要素と関連した知識が求められ、判断は簡単ではありません。またTableauの導入を成功させるためには本記事でご紹介したほかにも、ビジュアル分析に関する基礎知識の習得といった準備が必要になります。
そこで、「Tableau導入を成功させるため、事前に社内講習会を開催してほしい」「Tableau活用を相談できるプロフェッショナルに常駐してほしい」といった場合はぜひご相談ください。当社には300名(24年6月時点)超のSalesforce/Tableau専門コンサルタントやセキュリティ技術者が在籍しており、データに基づいた効率的な活動の実現を支援しています。

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