コラム詳細
はじめに
セラクCCCのSalesforce推進部のAです。Salesforceで管理するデータを活用できていますか。Salesforceに蓄積したデータは、[リード]や[取引先]といった[オブジェクト]単位で整理されています。
そしてオブジェクト内の1件1件のレコード画面では、項目ごとにデータを確認して関連付けられた別オブジェクトの情報を参照できます。しかしレコード画面からは、「自分の売り上げ目標と実績金額」といった判断に役立つデータは確認できません。データを効果的に活用するためには、レポートやダッシュボードといった機能を使い、リスト化や合計値算出などデータを加工することが必要です。
そこで本記事では、Salesforceレポートの入門として基礎知識や作り方、使い方など実務で活用できるナレッジをご紹介します。
また、レポートに関する重要なポイントを詳しく解説しているこちらの資料「レポートを攻略する10の技」と併せてご参考にしてください。
※レポートに関する機能は、LEX(Lightning Experience) とSalesforce Classicで一部異なります。本記事での記載は、基本的にレポート機能を使いやすいLightning Experience準拠です。Lightning Experienceは、従来のClassicよりも操作性が向上し、多機能かつ柔軟な画面カスタマイズができるUI(ユーザインターフェース)です。
Salesforceレポートとは、Salesforceに蓄積したデータを指定した条件で絞り込み、リストやグラフとして表示する機能です。個別の数値を見るだけでは直感的に分かりにくい情報を整理して、合計や平均値、最大値などを計算できます。
たとえば「売上上位の商品は?」「最も成功しているマーケティングキャンペーンは?」といった疑問に対する答えも、レポートを活用することで簡単に得られます。
Salesforceには3種類のレポート形式があります。レポートを作成する時のデフォルトは情報量が少ない場合に有用でシンプルな[表形式]です。直感的な操作で列や行をグループ化することで、グループごとの小計表示やグラフ作成が可能な[サマリー]や、より複雑な比較に向いた[マトリックス]に変更できます。データをどのような形にまとめると使いやすいか、事前にイメージを固めてからレポートを作成しましょう。
レポートの種類 | 主な使用目的 |
表形式 |
|
サマリー |
|
マトリックス |
|
上記の3種類以外に、共通項目をもつ複数のレポートを組み合わせた「結合レポート」という形式も存在します。結合レポートについて詳しく知りたいという方はこちらの記事「Salesforce結合レポートの活用・作成方法とは?」をご覧ください。
<表形式>
表形式はデータを最も迅速に表示できる、行と列で構成されたシンプルな一覧表です。扱う情報量が少ない場合には最適ですが、グループ化できない、行を制限しないとダッシュボードで表形式を使用できないといった制限があります。そのため、メーリングリスト生成のような単純作業に利用されることが多い形式です。
<サマリー>
サマリーは行をグループ化した形式であり、小計の表示やグラフ作成が可能です。たとえば、表形式では商談情報をリスト化しただけでは、「取引先ごと」にどれくらいの商談件数があるのか、売上合計金額はどれくらいなのか、といったデータは見えてきません。[取引先]をグループ化して商談件数や売上合計金額を集計すると、取引先ごとに商談に関する数値が見えます。サマリーは小計やグラフを交えてデータを整理できるうえ、ダッシュボードに配置できるため、頻繁に利用される形式です。
<マトリックス>
マトリックスとは列と行の両方をグループ化した形式です。サマリーより扱う情報量が多く、日付や商品、場所など複数の視点からグループ化してデータを整理したい場合や、さまざまな項目の値を比較したい場合に効果を発揮します。しかし扱う情報量が多くなりすぎると、「何を伝えたくて作られたのか」が分かりにくくなる側面もあります。サマリーで表現できるデータ以上の詳細なデータは不要、といった場合もあるため、マトリックスとサマリーの使い分けには注意しましょう。
レポートタイプとは、Salesforceレポートを作成する際のフォーマットです。標準レポートタイプとカスタムレポートタイプ、2種類のフォーマットがあります。
標準レポートタイプとは、すべての標準オブジェクトに用意されている基礎的なレポートタイプです。標準レポートタイプを使えば、一覧から目的に合致した標準レポートを選択し、簡単操作で手早くレポート作成作業を進められるため、初級者にオススメです。
しかし自由度が低いために使いにくいと感じる場合もあるため、「標準レポートタイプでは目的にマッチした表現が難しい」といった場合には、次に紹介するカスタムレポートタイプを使う必要があります。
カスタムレポートタイプとは、カスタムオブジェクトに関するレポートを作成する、標準レポートタイプでは表現できないといった場合に使う応用的なレポートタイプです。ユーザ自身が1から細かく設定して作成する必要があり、時間はかかりますが目的に合わせたカスタマイズが可能です。たとえば2つ以上のオブジェクトからレコードを抽出する場合、標準レポートタイプでは従オブジェクトが関連する主オブジェクトのレコードしか表示できません。一方、カスタムレポートタイプでは従オブジェクトが関連する主オブジェクトのレコードだけでなく、レコード表示範囲を[レポートレコードセットを定義]で任意に調節できます。
一度カスタムレポートタイプを作成してしまえば、同じオブジェクトリレーションおよび項目をもつカスタムレコードタイプをコピーできます。カスタムレポートタイプのコピー手順は、制作済みレポートの[設定]から[レポートタイプ]に進んで[コピー]するだけです。
レポートとダッシュボードは、両方ともSalesforceに入力したデータを分かりやすく可視化するための機能ですが、主な用途やデータの表示速度などに違いがあります。それぞれの特徴を把握し、目的に合わせて使い分けましょう。
レポートはデータを深掘りする際に便利です。基本的に1つのオブジェクトを対象に、エクスポートや最大2,000件までのデータリスト化が可能です。計算や整理が得意で、たとえば[商談の所有者]ごとの合計金額を比較するといった、情報をじっくり詳しく分析したい場合に向いています。
一方ダッシュボードはデータの推移を1画面でまとめて確認する際に便利です。複数のレポートを元にした情報をグラフィカルに表示でき、多面的なデータ分析や俯瞰的な情報の把握、頻繁に推移を確認したいといった場合に向いています。
主な使用目的 | データの表示速度 | |
表形式 |
|
・リアルタイムで更新 |
ダッシュ ボード |
|
・最後に更新した 時点のデータを表示 |
Salesforceレポートを使いこなすためには、「○○ごと」にデータを集計・整理することに長けているというレポートの強みを意識することが大事です。「月ごとの売上推移」や「担当者ごとの商談金額」など、どのような角度からデータを切り分けていくのか。「月ごと」や「年ごと」など、同じ角度でもどのような粒度で切り分けていくのか。データをどのように整理するのかを常に意識して、価値あるインサイトを得やすくしまましょう。
Salesforceレポートには便利な機能が多く用意されており、基本的な作成に慣れてきたらこの機能への習熟を通し、表現の幅を広げて作業を効率化することも大事です。たとえば、相対日付を利用することで「直近Nか月の商談レポート」を作成できます。また、行レベルの数式を利用することで「レポート作成の際に新しい数式項目」を作成できます。
Salesforceレポートは、事前に要件を整理しておけば、簡単な操作で作成できます。
本記事では、具体例として「営業マネージャーが、新しい案件をどの営業担当者に割り振ったらよいか」 の判断に役立つレポートの作成手順について解説します。
1.要件定義
最初に、目的達成のために必要な要件を定義する必要があります。
「どの担当者に新規案件を割り振るのが適切か?」という問いは抽象的なため、Salesforceに蓄積したデータから判断できるように、比較できる具体的な形に要件を定義していきましょう。
今回の例では、「営業担当者ごとの忙しさ」について比較できれば、誰に割り振るかの判断に役立ちそうです。「営業担当者ごとの忙しさ」を判断するために、[商談]を[進行中]のものに絞り込み、[営業担当者]ごとにグループ化してレポートを作成します。この際に[完了予定日]や[金額]、[取引先]といった項目を追加しておけば、どれだけ重要な商談か一目で確認しやすいレポートが完成します。
それでは新規レポート作成から[商談所有者]ごとのグループ化まで、レポート作成手順を4つに分けて見ていきましょう。
2.新規レポート作成
<レポートタイプの選択ウィザードで[商談]を選ぶ>
[商談]は標準オブジェクトであり、表示したい項目も標準項目であるため、今回は[カスタムレポートタイプ]を利用する必要は無さそうです。[標準レポートタイプ]を利用して手早く作成してみましょう。
Salesforceホーム画面からスタートします。画面左上の[アプリケーションランチャー]から「レポート」を検索し、[新規レポート]を選択。レポートタイプ選択のウィザードでは左側に大きな分類、右に詳細が表示されるため、左から右の順で作成するレポートタイプを選びます。
今回は、左側の大きなカテゴリの中から[商談]を選択し、右の詳細からも[商談]を選択してください。
3.表示レコードの抽出
<検索条件を使い、進行状況が[進行中]の商談に絞り込む>
レポートタイプを決定したら、画面左上の[検索条件]タブから、表示するレコードを絞り込んでいきます。「指定した項目について、指定した値より大きい」や「指定した項目に、特定の文字列や日付が含まれるレコード」といった検索条件を設定できます。この際に、[表示]が[すべての商談]になっていることを確認してください。[私の商談]になっていると自分が所有するレコードしか表示されません。
検索条件を複数設定した場合にはAND条件になりますが、OR条件に変更することも可能です。
今回は、[商談状況]が[進行中]のレコードを抽出します。
4.表示項目の設定
<表示項目の設定>
データを抽出したら、[アウトライン]タブから[項目]の追加や削除に取り掛かります。
今回は[取引先名][商談所有者][商談金額][完了予定日]を追加します。
他にも判断材料として、[期待収益]や[商談名]などを追加してもよいでしょう。
5.グループ化の設定
<[商談所有者]でグループ化する>
最後に、レコードの表示順が乱雑でデータを把握しにくい状態のため、表示項目の設定と同じように[アウトライン]タブから、列や行をグループ化して整理していきます。[行をグループ化]や[列をグループ化]を使って、レコードを整えましょう。
今回は[商談所有者]で列をグループ化します。
日単位などの細かな粒度で分析しにくい場合は[バケット列の追加]を使い、週単位、月単位など粒度を大きくすると見やすくなります。「パッと見て分かりにくい」と感じた場合は、[バケット]を使い[列]をグループに分けて整理するのも有効です。バケットは、グループ化と同様に[アウトライン]タブの[列]から[バケット列を追加]を選んで編集できます。
レポートを見やすく整えたら、[保存]して作成完了です。
レポート作成にチャレンジした際、「思い通りに動かない」「原因が分からない」といった経験をされた方もいるでしょう。そこでレポート作成で、「できない」「表示されない」といった躓きがちなポイントとその解決策をご紹介します。
レポート実行中に、期待したすべてのレコードが表示されない場合があります。この問題は多くの場合、レポート実行中の動作が権限不足でうまく機能しないことが原因です。たとえば、「参照関係項目がレポート条件として使用されている」「オブジェクト項目を参照する数式項目が使用されている」といった場合に、「レポート実行ユーザに項目表示権限がない」とうまく表示されません。
この問題を回避するため、レポートを実行するユーザのプロファイルに関して[項目レベルセキュリティ]から、少なくとも参照関係項目への[参照]アクセス権を与えておきましょう。
レポート作成または編集画面で、オブジェクトに追加した数式項目が一覧に表示されない場合があります。これは数式項目がカスタム項目の1種であり、後から作成したカスタム項目はカスタムレポートタイプの項目レイアウトに自動追加されない仕様が原因です。作成済みの当該レポートについて[作成]から[レポートで選択可能な項目]、[レイアウトの追加]と進んで、手動で表示したい数式項目を追加してください。
Salesforceレポートは、レポート一覧画面左上の[項目編集を有効化]をクリックすることで、個々のレポート編集画面に遷移することなく一覧画面でインライン編集できます。編集可能な項目にマウスポインタを近づけると鉛筆アイコンが表示され、値を変更するとレポートとソースレコードの更新とレポートの再実行処理が自動で行われます。このインライン編集機能はレポートごとに個別で有効化の設定を変更できるため、インライン編集できないという場合はレポート単位の設定を見直しましょう。
[設定]から[クイック検索]ボックスに「レポートおよびダッシュボード」と入力し、[レポートおよびダッシュボードの設定]を選択。そこからユーザインターフェースの[レポートでのインライン編集を有効化]項目にチェックを入れて保存してください。
Salesforceには、エクセルファイルやCSVなどの形式でレポートをエクスポートする機能が用意されています。このエクスポート機能を利用できない主な原因は、セキュリティの観点からプロファイル単位でエクスポートが制限されているためです。
エクスポート機能の制限は、[設定]から[ユーザの管理]、[プロファイル]を選び、[レポートのエクスポート]のチェックを変更して解除できます。
またエクスポートの際に文字化けしてしまう場合には文字コードをチェックして、SalesforceからのエクスポートとMicrosoft Excelでファイルを開く際にはUnicode(UTF-8)になっているか確認しましょう。
レポート作成後、[グラフを追加]のボタンがグレーの状態でグラフを追加できない場合があります。原因はグループ化の設定です。グループ化を設定していないとグラフは作成できません。[表形式]レポートはグループ化が利用できないため、レポートの形式が[サマリー]か[マトリックス]になっていることを確認したうえで、グラフでまとめたい項目をグループ化すれば、グラフを追加できます。
レポートのデータを手軽に強調する際には「しきい値」設定が便利です。集計項目に[条件付き書式ルール]を追加して「しきい値」を設定しておけば、しきい値を超えたデータの背景色を一目で分かるように自動で変更して強調表示できます。この機能を利用できるレポート形式と項目は決まっているため、うまく利用できない場合は、一度レポートの形式と強調表示したい項目を確認してみましょう。しきい値設定は、1つ以上の基準または集計を含むサマリーレポートまたはマトリックスレポートで利用できます。また、設定できるのは集計項目またはカスタム集計項目だけであり、その他の項目に利用できないことにも注意してください。
レポートをExcelにエクスポートした際にも、この強調表示は反映されないことも覚えておくとよいでしょう。
クロス条件とは、従レコードの条件で主レコードを絞り込む機能です。たとえば「現在進行中(条件)の商談(従レコード)が存在する取引先(主レコード)」のように、取引先のデータには存在しない条件でレコードを絞り込みます。
クロス条件が使用できない主な原因は「レポートタイプ」です。クロス条件は標準レポートタイプで使用できますが、カスタムレポートタイプや結合レポートでは使用できません。
たとえば、取引担当者データの無い(従オブジェクト無し)レコードを含めた取引先(主オブジェクト)を表示したい、といった場合を想定してください。「従オブジェクト無しのレコードを表示」する場合には標準レポートではなくカスタムレポートタイプを利用する必要があるため、クロス条件は利用できません。カスタムレポートタイプを使用する場合は[レポートレコードセットを定義]する際に関連オブジェクトを定義できるため、この機能を利用しましょう。
レポートで、前年同月比や前年同期比を表示するためには、[アウトライン]の[集計項目を追加]を使い、差異を表示するカスタム数式項目を追加する必要があります。
たとえば、月ごとにレポートに表示された前月との金額の差を計算する場合にはPREVGROUPVAL関数を使った数式[AMOUNT:SUM – PREVGROUPVAL(AMOUNT:SUM, CLOSE_DATE)]を利用します。このカスタム数式項目を使いこなすためには関数や数式に関する知識が必要となり、基本的なレポート作成操作と比べて難易度が高いため、社内の詳しいユーザや専門のコンサルタントに相談するとよいでしょう。
このほかにもSalesforceのレポート活用に関する重要なポイントを詳しく解説しているこちらの資料「レポートを攻略する10の技」もご活用ください。
本記事ではレポートの基礎知識から簡単な作成手順、頻出するトラブル解決方法までご紹介しました。しかし、レポートを実務で効果的に活用するためには今回ご紹介した以外にも幅広いナレッジが必要です。活動状況レポートやKPIレポートなどの頻繁に使うレポートの作成方法だけではありません。[関数]や[権限]などレポートを扱ううえで覚えておいた方がよい関連知識、「Chatterでのレポート共有」や「レポートの更新メール自動送信」など他のアプリやツールの知識も多く必要なため、独学での習得は困難です。身近な熟練者に相談するのが望ましいですが、社内にSalesforceに関する知見をもつ人材がいない、レポートをさらに使いこなしたいといった場合はぜひ当社カスタマーサクセスチームの無料相談からお問い合わせください。当社では、300名(23年5月時点)を超える専門コンサルタントがSalesforceの定着・活用推進を支援。Salesforceに関する社内教育や管理者育成についても多くの実績があります。
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